優しさと心の垣根

 「人のまわりには、そもそも垣根なぞあるものか。垣根をつくるのは自分。こわすのも自分だ。自分でがんじがらめにめぐらせた垣根は、自分でこわさねばならぬ。」(「命もいらず 名もいらず」山本兼一著:集英社文庫)人の気持ちは、その人になってみなければわからない。この世界で生きている以上、常に誰かと接しなければならない。自分の部屋に引きこもっていたとしても、生きていく以上、少なからず外界との接点が生まれる。日常の生活の中でも、学校や会社などで、好き嫌いに関係なく人と接しなければならない。その人間関係の中で、多くの人が悩んでいる。特に気の合わない、性格の合わない、自分の意見に賛同しないような人間と交わることはとても疲れる。時には精神的圧力から健康を害することもある。人との関係で疲弊する時は、まず相手を理解することが大切だ。しかしその前に、その人に対する先入観を捨て去ることが必要だ。その先入観こそ、自分のまわりに張り巡らされた垣根であると言える。自分で勝手に垣根を作ってしまうから、相手との距離が遠くなり、そして垣根の高さにより、相手の全身像も見えなくなってしまう。ますます相手を理解することができなくなる。すべての人間に対して仲良くなろうとしなくてもいいだろう。無理に笑顔で取り繕うことをしなくてもいいだろう。好き嫌いがはっきりしていてもいいだろう。理解してもらわなくてもいいだろう。ただ、相手を思いやる気持ちは大切にしたい。少なくとも自分だけは、垣根を作らずにいたい。いま自分に張り巡らされている垣根も少しずつこわしていきたい。相手の思うところを一度すべて受け止め、相手のすべてを受け入れる度量がほしい。